5月10日、参議院国土交通委員会で質問に立ちました。
本日の委員会では「国土の整備、交通政策の推進等に関する調査」というテーマに沿って①AI技術等を活用した利水ダムの活用・操作について②下水サーベイランス技術の実証について③知床観光船事故の再発防止について──などについて、斉藤国交大臣らに質問しました。
なかでも、下水サーベイランスについては、下水から市中の新型コロナウイルスの感染状況を予測できる技術の活用を「検討する」という段階から、一歩前に進め、産官学一体となった「社会実装」に向けた取り組みを開始すべき時期だと訴えました。
これに対して、斉藤大臣は「関係省庁と連携して積極的に取り組んで行く」と前向きな答弁をされました。
また、知床観光船の事故再発防止についても、斉藤大臣から、本日から緊急点検項目の追加することや、明日の第1回検討会議の中身に言及しながら、特別監査の項目見直しなど、二度と同様の事故を起こさせない決意が表明されました。

参議院 国土交通委員会で質問(5月10日)
■以下、全文を掲載します。
1.AI技術等を活用した利水ダムの活用・操作について
公明党の塩田ひろあきです。
まもなく梅雨入りの季節を迎えます。近年、気候変動による豪雨災害の激甚化や頻発化が続いていることから、3月16日の委員会でも質問しましたが、水(みず)災害に備えた対策強化の一つとして、ダム運用の高度化について質問致します。
先日の委員会で、豪雨の時の雨量予測から人工知能(AI)を活用してダムへの流入量を予測する取り組みなど、ダム運用の高度化に向けた取り組みについてお伺いしました。
国土交通省では、流域治水の取り組みの一つとして、令和2年から、全国の利水ダムも対象にして、大雨が降る前にダムから事前放流を行い、ダムの空き容量をできるだけ確保して治水機能の向上に努めています。
また、この事前放流を、より効果的に実施するためには、気象庁と連携して雨量予測の精度を向上させるとともに、AIを活用したダム貯水位の予測技術など、デジタルトランスフォーメーションを進めながら、さらなる治水機能の強化をめざしていると認識しています。
①15日先までの雨量を予測するAIシステムの活用
ただ、事前放流の判断は非常に難しい中で、京都大学や日本気象協会などのチームが、AIを用いて15日先までの雨量を予測する新たなシステムを開発しており、すでに約40のダムで実証実験が進んでいると聞いています。
政府は今年度まで行われる実験の成果を踏まえて、新たなシステムの導入を検討すると報道されていますが、具体的な導入を進めていく基準や今後のスケジュールについて伺います。
また、このダムの「緊急放流」を回避できるシステムについて、予測精度を向上させ、導入を進めることができるよう、国としてはどのように活用していくのか、お伺い致します。
②「事前放流」の実効性をいかに高めるか
次に、「利水ダム」の事前放流について伺います。国は農業用水や発電などに水を利用する「利水ダム」でも事前放流を行うとしていましたが、令和2年7月豪雨では、7月4日に九州を襲った一連の豪雨では実施されず、下流域の堤防決壊や氾濫が相次ぎました。
「利水ダム」は、洪水を防ぐ機能を持つ「治水ダム」や「多目的ダム」と違い、放流に時間がかかるため、3日前ごろからの事前放流が必要とされていますが、この時の九州は、線状降水帯による豪雨が続き、直前まで大雨の予測が困難であったために事前放流ができなかった例です。この事例を教訓と捉え、国交省としてはどのように、「事前放流」の実効性を高めていくのか、お伺いします。
2.下水サーベイランス技術の実証について
次に下水疫学調査(下水サーベイランス)の活用について伺います。
政府全体として「下水サーベイランスに関する推進計画」を取りまとめ、実証に向けて取り組んでいるところですが、国交省では、令和3年3月に「下水道における新型コロナウイルスに関する調査検討委員会」を設置し、厚生労働省や内閣官房コロナ室とも連携しながら、コロナ感染症の感染状況を把握する下水疫学調査の活用について検証・調査を加速させていると承知しています。
令和3年度補正予算の中にも「下水サーベイランス技術の実証」予算として約10億円が見込まれています。
①令和3年度の調査結果からの考察
そこで、国交省に伺います。
「下水道における新型コロナウイルスに関する調査検討委員会」の報告において、令和3年度の調査結果から、新規感染者数と下水中の新型コロナウイルス濃度の相関関係について、どのような結果が得られたのか、また、その調査結果からどのような考察ができるのか、要点をお示し下さい。
②下水サーベイランス実証事業の具体例
内閣官房コロナ室に質問します。
令和3年度補正予算に計上された「下水サーベイランス実証事業」について、いつから、どこのどのような施設を対象に、どういった研究機関などとタイアップしながら実証事業が始まっているのか、または、これからスタートする予定なのか、お答えください。
③検討段階から「社会実装」に向けて
公明党の国土交通部会として今年1月11日、仙台市の南蒲生浄化センターと東北大学工学研究科を訪れ、下水サーベイランスの検証実験の現場を視察しました。
仙台市は東北大学と協力して、下水のウイルス濃度を解析し、1週間先の感染者数を予測する取り組みを実施しています。
同大学大学院工学研究科の佐野大輔教授は「昨年1年間の新規感染者の予想値と実際値の推移がほぼ一致している」と説明されました。
これは、先ほどの答弁とも一致した方向性の検証結果です。
国交省においては、「下水道における新型コロナウイルスに関する調査検討委員会」という、その技術の活用を「検討する」という段階から、一歩前に進め、産官学一体となった「社会実装」に向けた取り組みを開始すべき時期だと考えます。
国交大臣の見解を伺います。
3.観光船事故の再発防止について
①「通常監査」や「特別監査」のチェック項目見直しとその実効性
知床半島沖の観光船事故において、お亡くなりになられた方々に心より哀悼の意を表するとともに、ご家族の方々にお悔やみ申し上げます。
知床観光船の事故は、日々伝わってくる報道からだけでも、事業者の安全管理にあきれるほどの様々な問題があったと指摘せざるを得ません。
このような事故は二度と起こしてはなりません。
徹底した原因究明とともに、実効性のある再発防止策が重要です。
国交省は、全国の事業者に対して、安全対策の再点検を指示したとのことですが、具体的にどういう内容の徹底をしたのでしょうか。
今回の事故を起こした「知床観光船」は、過去に2回も国交省の「特別監査」を受けて「改善報告書」を提出しています。
そこで、事故を起こした事業者に対する「特別監査」の実効性を如何にすれば高められるのかという観点と、平時の定期的な通常監査においても、そのチェック項目の見直しや調査方法などの再検討が必要ではないでしょうか。国交大臣の見解を伺います。