攻めの救急医療へ
助かる命救う体制構築を基本法制定し15分ルール確立急げ
わが国の救急医療は、休祭日や昼夜間を問わず、24時間体制で診療が行われており、救急隊員や救急病院の看護師、医師ら救命救急に携わる医療関係者の努力によって、多くの国民の命が助かっている。
一分一秒を争う救命救急で最も大事なことは、何と言っても搬送時間の短縮だ。命に直結する問題だからだ。
だが、救急車の119番通報から現場到着までの平均時間は8.9分、通報から病院収容までの平均搬送時間は40.6分を要している。呼吸停止後、10分を経過するとその半数が死亡するといわれ、救命は一刻を争う。
ところが、救急車の業務は年々増加し続け、令和2年中の救急出動件数は593万件を突破。救急搬送の急増に、病院側の受け入れ態勢が追いつかず、搬送時間が延びる一因にもなっている。
重篤な患者に高度医療を行う救命救急センターは全国に294カ所あるが、まだ十分とは言えない。さらに拡大すべきだ。
公明党が救急医療の充実に取り組んで30年以上になる。国会で初めて救急救命士の実現を訴え、1991年4月、救急救命士法が成立。これによって、救急救命士の応急処置範囲は大きく拡大した。
これからの救急医療は、患者を“待つ”だけでなく、医師や看護師がヘリコプターや救急車などに乗り込み、救急現場へ急行するドクターヘリやドクターカーの適正な配備が欠かせない。
救急医療に精通した医師が現場に到着後、直ちに救命医療を行うドクターヘリの活躍は目覚ましい。医療行為までの大幅な時間短縮で、救命率の向上や後遺症の軽減に大きな効果を挙げている。
現在、44道府県で54機が飛んでいる。今年度中に東京が増え、55機まで拡大する予定だ。50キロメートル離れた救命現場まで医師と看護師を乗せて、わずか15分で到着する。交通不便な僻地や離島なども含め、救急医療に欠かせない存在だ。今後、全国をドクターヘリのネットワークでカバーできる70機までの拡大をめざしている。
一方で、ドクターヘリは、今のところ夜間には飛べないことや、地域によっては医師や看護師が載って現場に急行するドクターカーが有効な場合ある。そこで、病院によっては、夜間のドクターカーの運行や、都市部などにおけるドクターカーの新たな運行拡大に期待したい。医師不足や財政負担など課題はあるが、国が本気になって普及策を講じる必要がある。
ドイツなどでは、緊急度の高い患者に対して、15分以内に医師が診察する「15分ルール」が確立している。
国内においても、救急医療の「15分ルール」を確立すべく、「救急医療基本法」の制定が必要と考えている。
「待つ医療」ではなく、助かる命は何としても救う「攻めの救急医療」へ転換すべきだ。