ドクターカーの積極的拡充を/決算委で厚労大臣に
4月25日午後、決算委員会の省庁別審査において質問に立ちました。
決算委員会は、参議院のみに置かれる常任委員会で、予算の決算、実施状況について、各大臣に対して幅広く議論がなされる委員会です。
本日は5回目の省庁別審査(裁判所、法務省、厚生労働省)の部ということで、私からは、主に厚生労働省に対して、ドクターカーの普及・拡充の必要性を訴えました。
先日、視察した日本医科大の救命救急センターの現場の声を基に、ドクターカーの現状と課題を掘り下げて、①国が主導して実態を把握する調査を行い、分析をした上で各地域における拡充策を図ること②導入費用と運用費用の手厚い補助制度の見直し検討──などを強調しました。
後藤厚労大臣からは、ドクターカーの運用事例等に関する調査研究事業を通して、実態把握と分析をした上で、導入費用と運用費用の補助を検討したい旨の答弁がありました。
■以下、質問の要旨を掲載します。
1.ドクターカーの普及・拡充について
医師が救急の現場に駆けつける「ドクターカー」の普及・拡充について質問します。
私は、全ての国民が119番通報から15分前後で医師による治療が受けられる「救急医療への転換」を進めるべきだと考えています。
「ドクターヘリ」をいち早く全国配備したドイツでは、各州の救急法に「15分前後で治療に着手すべき」という「15分ルール」が定められています。
どんな方法を使っても、15分前後で治療を行えれば、救命率は格段に向上します。
ドクターヘリについては、4月18日に香川県に導入されたことで、46都道府県56機体制となりました。広域連携の京都府を含めると、実質的に47都道府県にドクターヘリが配備されたことになります。
私は全国をカバーするには70機体制まで必要と考えていますが、併せて、医師や看護師が救急現場に直接出向く「ドクターカー」の全国的な普及によって、救命率向上はさらにアップすると考えています。
すでに、ドクターヘリの基地病院などで、ドクターヘリとドクターカーを同時に出動させていたり、病院においてもドクターカーを積極的に走らせ、「待つ医療ではなく、攻めの医療」に徹して、効果を上げています。
そこでまず、ドクターカーの必要性について、厚生労働大臣の認識を伺います。
2.ドクターカーの現状と課題について
厚労大臣もドクターカーの必要性を認めて頂いていますが、ドクターカーの現状と課題について知ってほしいと思います。
一般的にドクターカーと言われているのは、
①車内でレントゲン撮影や、エクモ(体外式膜型人工肺)、さらに開胸・開腹手術
まで実施可能な高度な設備を備えた高規格救急車タイプのドクターカー
②医療機材を持った医師が現場に急行することに特化した乗用車タイプの
ドクターカー(ラッピドカー)
③消防機関が所有する救急車を活用したドクターカー
――などさまざまなタイプがあり、各地域の医療機関や各消防本部が自発的、
自主的に運営しているのが実態です。
先週19日、救命救急医療の分野で多くの実績を上げている都内・文京区の日本医科大学の高度救命救急センターを訪れ、ドクターカーを視察しました。
同大学病院の横堀将司(よこぼり・しょうじ)センター長と、ドクターカーを用いた「病院前救護」の現状と課題について、意見交換をするとともに、配備されている3種類のドクターカーに乗りながら詳細な説明を受けました。
同センターのドクターカーは、出動要請から現場到着まで、コロナ前は平均7分、医師や看護師が防護服を着てから出動しなければならないコロナ禍中においても、10分から11分で現場に駆けつけ、医療行為を開始できていました。
高規格のドクターカーでは、受け入れ病院の決まらない重症のコロナ感染症患者を乗せ、駐車場内にドクターカーを停めて適切に処置を施して命を救った事例もあったそうです。
横堀センター長が言うには、このようなドクターカーは東京都内で9施設にあるものの、各救命センターや医療施設によっての自発的、自主的な運用故に、出動要請の判断基準や運用のルールに細かい違いがあって統一された運用方針が策定されていないことが課題であり、それ故に各医療機関が連携した、より高度なドクターカーの活用に至っていないのが実態です。
地域の有限な医療資源を有効に活用し、救急医療の質の向上のため、医師の派遣や搬送手段の選択、効率的な運用方法等について、前向きな協議するためには、国が主導して、まずは、ドクターカーの全国の実態を把握する調査・分析と、実態に基づいた協議を重ねる会議体などの早急な発足が必要だと考えます。
令和4年度予算に計上された「ドクターカーの運用事例等に関する調査研究事業 1千400万円」は、いま私が指摘している、全国のドクターカーの実態把握と効率的な運用方法を検討することにつながるような研究事業と理解して良いのでしょうか。厚労省の見解を伺います。
次に、ドクターカーの導入費用と運用費用など、財政的課題について質問します。
先ほどの日本医科大の高規格救急車タイプのドクターカーの車両の購入費用は、医療用の設備を含めて約4千万円、SUVを改装した乗用車タイプのラッピドカーでも約1千500万円とのことで、「救命救急センター設備整備事業」の「ドクターカーおよび搭載する医療機器等の購入費を補助する制度」を活用したとしても、事業者負担が3分の1では負担が重くのし掛かっているとの訴えでした。
加えて、ドクターカー出動回数が増加すると、それに応じて車両の更新時期も早くなり、それを見越した予算措置も必要となり、専従の医療スタッフの人件費と合わせると、病院の経営を圧迫するほど、きついとのことです。
最近では、クラウドファンディングで寄付を募り、ドクターカーを新規導入する例や、古くなった車両を更新している医療機関の例も見受けられます。
「一人でも多くの命を救うため」との信念と情熱を持ち、不眠不休で奮闘する救急医たちの自発的なボランティア精神でドクターカーが走り、クラウドファンディングという多くの善意でドクターカーが支えられるという現状で、果たして良いのでしょうか。
ドクターヘリの導入についても、当初は運航費の自治体負担分が重く、配備は遅々として進まない状況でしたが、ドクターヘリの特別措置法により国の財政負担が明記されたことで、自治体の負担が軽減されて配備に加速がついた経緯があります。
ドクターカーについても、救急医療に対する診療報酬の柔軟な見直しを含めて、より多くの費用負担を軽減する手厚い助成制度が必要です。今後の見直しの検討について厚労大臣の見解を伺います。
3.患者の選択によらない特別療養環境室に係る料金について
病院の差額ベッド代について伺います。
病気等で民間の病院に入院する場合に、差額ベッド代が派生するベッドしか空きがなく、やむなく入院するケースがあります。
差額ベッドの場合、健康保険の対象外のため、全額自己負担となっています。
このように、やむを得ない入院の場合に支払いが生じているケースに対して、厚生労働省が令和4年3月4日に出した通知によりますと、患者本人の「治療上の必要」により、差額ベッド室に入院した場合や、病棟管理の必要性等から差額ベッド室に入院させた場合など、実質的に患者の選択に寄らない場合などは、「料金を求めてはならない」となっているのではないのでしょうか。
ただ、現実的は、差額ベッド代を請求されるケースが多く起きています。
こうしたことをなくすためにも、厚労省として通知を出して終わりではなく、「患者本人の了承なしに差額ベッド代が発生しないような体制の強化に取り組んで頂きたい」と思いますが、厚労大臣、いかがでしょうか。
4.保育所入所待機児童の解消に向けた課題について
政府は待機児童の解消を図るため、保育の受け皿の拡大に取り組んできており、その結果、待機児童数は令和3年4月時点で5,634人となり、前年比54.7%と大幅に減少しています。
ただし、この要因には新型コロナウイルス感染症を背景とした利用控えがあることも考えられ、今後の見通しを楽観視することはできません。
また一方で、保育所等における保育事故の件数は年々増加しており、内閣府の統計によると死亡事故や重篤な事故の報告件数は令和2年は2,015件、対前年比で271件の増加となっています。待機児童を減らす保育の量の拡大とともに、保育の質の確保、中でも安全性の確保が最重要です。
そこで、地方公共団体が原則年1回以上実施することとなっている保育所に対する指導監査や認可外保育施設に対する立入調査の実施率と実地検査においてどのような指導・改善がなされているか、厚労省に質問します。