公明党 参議院議員/全国比例区 塩田ひろあき

活動報告

被災者のこころケアを万全に/羽田事故訓練にドクターヘリの活用を/決算委員会

2024年04月08日

参院決算委員会の省庁別審査が4月8日開かれ、質問に立ちました。
被災者の「こころのケア」対策の充実、羽田空港の救急医療体制の強化、下水サーベイランス(疫学調査)事業の普及・拡充などについて政府の見解を伺いました。

発災3カ月を経た能登半島地震に関して、避難生活を続ける人や自宅に戻れた人などで二極化が進む中、「体調不良や将来への不安が現れる時期との指摘もある。今が心のケアにおいて大事なタイミングだ」と主張。入居が進む仮設住宅でも「コミュニティーを絶やさないことが重要だ」と訴えました。

武見敬三厚生労働相は、仮設住宅入居者が日常的に交流できる拠点を設けることも心のケアにつながるとの認識を示した上で、「ニーズの変化に対応して切れ目のない支援を行う」と答弁されました。

また、羽田空港で毎年実施される航空機事故の対応訓練について、今回の航空機衝突事故の教訓を活かし、万全の医療体制を整えるためにも「ドクターヘリやドクターカーの活用も視野に入れるべきだ」と提案しました。

<質問と答弁>

○塩田博昭君 公明党の塩田博昭でございます。
まず、能登半島の地震関連について、まず大臣の方にお聞きをしたいと思います。
発災から三か月が経過をいたしまして、インフラなどの復旧に併せて、被災された方々の生活も少しずつ復旧復興の方に向かって進み始めている、こういう現状でございますけれども、被災された方が避難所から仮設住宅に引っ越しされる方もいらっしゃいますし、なりわいの再建に向かって準備始められる方もいらっしゃる。そしてまた、新年度が始まって、お子さんの準備始められている方もいらっしゃいまして、そういう意味では、様々な環境の変化に今直面をしている状況でございます。

専門家によりますと、発災直後の急性期はやはり不安とか不眠、強いストレスということが現れますけれども、三か月が経過した頃から、避難生活が続く人がいる一方で、自宅に戻れると、こういう人もいるということで、二極化するわけでありますけれども、そういう中で、体調不良、また将来不安などの問題が現れる時期でもある、このようにも言われているわけでございます。こうした時期において、具体的な症状としては、PTSDという心的外傷後ストレス障害が起こったり、うつ病とかアルコール依存症が増える、こういう傾向もあるというふうに聞いています。

また、東日本大震災などの教訓としても、発災から三か月が経た頃から、やはり災害関連死が起こったり、また残念ながら自殺者が増えたり、この時期に適切な対処や治療を受けられないとその後の症状が重症化、長期化していると、こういう事例も起こっています。まさに、今が心のケアにおいてとても大事なタイミングであろうと、このように思っているんですね。

また、精神科医などによる、専門家による様々な治療、診察、相談もあるかと思いますけれども、やはり被災者宅を訪問して困り事を聞いてあげたり、仮設住宅でもコミュニティーを絶やさないという取組もやはり大事だと、このように思っておりまして、発災から三か月の今、心のケアへの重要性とともに、具体的な施策の取組について、まず厚生労働大臣から見解をお伺いいたします。

○国務大臣(武見敬三君) 災害復興期に避難生活を送る中でPTSDであるとかあるいは二次的ストレスに起因して心身の変化を起こす被災者が増加することは、もう過去の災害の経験からも指摘されております。
この早期に精神疾患の症状を発見する観点からも適切な支援体制整える必要があるということは認識しております。

このため、発災当初から、DPAT派遣による避難所の巡回、それから石川こころのケアセンターにおける電話相談などもやってきております。今後、精神保健医療ニーズへの対応は地域の精神科医療機関などが担う方向でありますが、さらに、この避難所の巡回等の活動については、順次、石川こころのケアセンターにおいて体制を充実した上で実施する予定でございます。また、電話相談につきましては、支援者用の相談ダイヤルを設けるなど内容の充実を図っておりまして、今後も継続していくこととしております。

実は先ほど馳知事が要請持って大臣室へ来られまして、お目にかかったときにも、仮設所に避難される高齢者の中で、やはりそこに今度はこもってしまう高齢者の方が増えてくるので、その仮設所の中にも皆さんが出てこられるようなコミュニティーをいかに設置するのか、あるいは仮設所の中に言わばお風呂に入る場所をつくって、そういうような場所がまた共有できるようなそのコミュニティーをつくり出すというようなことまで考えなきゃならないんだという様々な御指摘を伺いました。いずれも先生御指摘の案件と全く同じ心のケアに通じるところだと私は理解をいたしました。

今後とも、被災地におけるこのニーズの変化等に対応しながら、心のケアを必要とする被災者に対し切れ目のない支援を行ってまいりたいと思います。

○塩田博昭君 今大臣がおっしゃられたことは非常に大事なことでございまして、やはり、コミュニティーを絶やさない、また避難所に入られてもそこでいろんな話ができる、井戸端会議もできる、そういうことが非常にやっぱり大事なんですね。そういう意味で、今大臣も言われましたように、避難所であっても、例えばお風呂があって、みんながコミュニティーつくれる、そういうような環境を整えてあげることもやはり心のケアの一つだと、このように思っていますので、是非そういう部分進めていただければ有り難いと思っています。

そして、被災者の避難住民だけじゃなくて、やはりそれを支えている自治体の職員についても大きな心理的影響をやはり受けておりまして、私も六市町の全ての市町の職員にも会って様々な話を聞いてまいりました。そこの中で、地方公務員、職員という使命感のために自己犠牲的な行動を取りがちな、そういう中で、疲労を訴えにくくて自身の心のケアは後回しという、そういう方が非常に多いなというふうに痛感いたしておりますし、しかも現場で様々今住民説明会も行っています。住民は不安でいっぱいですから、そういう意味では、思わず心ない言葉を投げかけてしまったり、怒りをぶつけられる場合も職員の中にはありますから、そういう一つ一つが大きな心的なストレスにもなっている場合もあるわけですね。

そういう中で、もうこの不眠不休で三か月ひたすら走ってこられて、もう限界を超えている、こういう過酷な状況でもある、そういうふうに思っております。そういう意味では、早急に各被災自治体職員の心のケアにおいても、休暇を積極的に促す取組をちゃんと進めてもらいたいとか長時間の残業をさせないとか、全国の自治体からの応援の追加や継続を含めて特段の対策をしっかり講じていくということをやっていただきたいと思います。
政府参考人の見解をお伺いいたします。

○政府参考人(小池信之君) まず、被災自治体の職員の心のケアは重要な課題であると認識をしております。

そのため、総務省では、被災自治体に対しメンタルヘルス対策の支援専門員派遣事業などを積極的に活用いただくよう周知しており、この事業につきましては、要望調査を行い、自治体からの要望を受けて三月から順次、臨床心理士による個別面接などを行っているところでございます。

さらに、三月に総務省から全国の自治体へ通知を発出しておりまして、その中では、災害対応により職員の心身の疲労蓄積が懸念されることから、引き続き、交代制による休暇の取得や業務分担の見直しなど、勤務環境の確保や時間外勤務の縮減に向けて適切に対応していただくよう助言をしておるところでございます。

一方、能登半島地震では、これまで一日当たり最大千二百六十三名の応援職員に被災市町の業務を支援していただいておりまして、現在も五百名程度の応援職員に業務を支援していただいております。今後も、現地のニーズを伺いながら、不足する場合には応援団体を追加するなど、応援職員の確保に努めてまいります。また、被災市町からの中長期の職員派遣に係る要望につきましては、技術職員百五十九名については全て充足し、一般事務職員等についても派遣を開始しているところでございます。

今後も、被災自治体のニーズを踏まえて応援派遣職員を確保するとともに、職員の健康確保が図られるよう必要な対応を行ってまいります。

○塩田博昭君 御答弁ありがとうございます。
その上で、やはり大事なのは、被災町も職員も疲弊していますけれども、なかなか、じゃ、もっともっと応援を出してもらいたいという大体要請に従って全国の自治体から職員出していますから、なかなか要請もできないような自治体もやっぱり最近は増えてきているんじゃないかと思っているんですね。そういう意味では、急性期において千二百六十三人が今五百名程度減っているわけですよ、現実には。しかし、三か月たった頃からやはりいろんな意味で精神的ストレスが大きく出てくるんじゃないかというふうに思っています。

そういう意味で、やはり被災市町からの要請に従って出しているだけだとどうしても減ってしまうのではないかという危機感もありますので、できる限り実情を把握していただいて、より多くの派遣ができるような体制考えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

そして次に、能登地域の六市町への新たな交付金についてお伺いをしておきたいと思います。

これについては、三月二十五日の予算委員会におきまして、私の方からも岸田総理に被災者への迅速な給付金の実施を訴えておりまして、半壊以上の住宅被害を受けた世帯に最大三百万円を支給する国の新たな交付金、地域福祉推進支援臨時特例給付金について、いつから始められるのか、丁寧に周知してほしいと、このように求めたところでございまして、そこで新たな交付金に基づく臨時特例給付金については石川県が三月二十九日から問合せに応じる給付金センターを設置をしておりますが、第一弾としまして、被災者生活再建支援金を受給する世帯のうち、高齢者や障害者のいる世帯に対して、順次、家財等給付金五十万円を支給開始するということでありますけれども、今回の給付金は被災者生活再建支援金とは別の制度でありますので、手続が複雑になるのではないかという指摘が一点目あります。そして、今回第一弾の支給ではどのような手続の簡素化を図っているのか、まず教えていただきたい。そして、さらに第二弾以降の支給については、可能な限り手続を簡素化すべきと考えておりますけれども、厚労省としても、石川県に対してしっかり協力して対応すべきではないかと思っております。厚労省の見解をお伺いいたします。

○政府参考人(朝川知昭君) お答えいたします。

新たな交付金制度に基づきまして、能登地域六市町の被災世帯を対象とする給付金につきましては、今後、石川県から順次支給が行われます。

委員おっしゃっていただきましたとおり、第一弾として、まずは被災者生活再建支援金の支給を受けた高齢者、障害者のいる世帯に対して、家財等給付金として対象となる世帯に一律で支給されます五十万円、こちらを先行して支給いたします。
この支給に当たりましては、市町に申請があった被災者生活再建支援金の申請情報を石川県が確認し、本給付金の対象となる世帯を特定した上で支給を行うこととしておりまして、被災者からの申請手続は不要になると聞いております。

また、第一弾の後に実施予定されております今後の支給に当たりましても、例えば市町で入手できる情報につきましては、申請書類の提出を省略可能な運用になるものと承知しています。
このため、国としては、本年三月に本給付金を公金受取口座登録法に基づきます特定公的給付に指定しまして、給付金の支給要件に該当するかどうかを判断するため、石川県において、必要な地方税情報や児童扶養手当の支給に関する情報などを取得、利用できるようにいたしました。

いずれにいたしましても、被災者の目線に立ちまして、被災自治体の事務負担にも配慮しながら、簡便かつ迅速な手続で支援を受けられるようにすることが重要と考えており、厚労省としても、引き続き、石川県に対して必要な協力を行ってまいります。

○塩田博昭君 今の様々な給付金についてしっかり、第一弾はプッシュ型でちゃんとやるということで、第二弾については書類等の省略化もしっかりやって簡潔化にしてやっていくということで、第三弾の住宅再建の最大二百万円についてもできる限り分かりやすく前に進めてほしいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

そして、改めて確認いたしますけれども、新たな交付金に基づく特例給付金は被災者生活再建支援金とは別の制度になっているものでございますので、この給付金には特にどういった特徴があって、さらに被災者にとってどのようなメリットがあるのか、改めて厚労省の見解をお伺いいたします。

○政府参考人(朝川知昭君) お答えいたします。
新たな交付金に基づきます給付金につきましては、住宅が半壊以上の被災をした世帯であって、高齢者、障害者のいる世帯や資金の借入れ、返済が容易でないと見込まれる世帯に対しまして、家財の再建支援の五十万円以外に自動車が滅失した場合に五十万円を支給することとしまして、また、住宅の再建支援として最大二百万円を支給することとしております。

被災者生活再建支援金が中規模半壊以上の被災をした世帯を対象として、住宅の被害の程度に応じて支給額が異なることとの比較で申し上げますと、この新たな交付金に基づく給付金は、住宅が半壊の場合にも支給対象になるということ、また、住宅の被害の程度にかかわらず支給額が合計最大三百万円となるということが特徴的であります。これにより、より多くの被災者の方々に必要な支援を届けることが可能となり、能登地域六市町における地域コミュニティーの再生を強力に進めることができると考えております。

なお、被災者生活再建支援金は、法律上、その権利等の差押えが禁止されているところ、本給付金についても、先日、議員立法により同様の差押禁止の措置をいただいたものと承知しています。

○塩田博昭君 ありがとうございます。ただ、やはり被災者にとってはまだまだやっぱり分かりにくい制度になっていまして、そういう意味での今回の新たな交付金と、そして新たな交付金の対象にならないところについては石川県独自の制度をしっかり設けてやっているということの合わせ技で分かりやすくしていただくこととか、いろんなことをもう少し全体として分かりやすく被災者に伝わるような仕組み、しっかり努力してつくっていただければ有り難いと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

次に、羽田空港で一月二日に発生をいたしました航空機の衝突事故に関連をいたしまして、羽田空港の救急医療体制の強化についてお伺いをしたいと思います。
このことは三月二十五日の予算委員会でも私取り上げまして、国交大臣から、重要な指摘であり、関係機関と連携して検討すると、このような前向きな御答弁いただいたところでございます。

そこで、本日は、救急医療を所管する厚生労働大臣に御所見を伺いたいと思っております。
まず、海上保安庁機の五名の乗員がお亡くなりになられたことには衷心よりお悔やみを申し上げます。

その一方で、日本航空機の乗客の中で一人も犠牲者が出なかったことはまさに奇跡的なことでございまして、限られた時間内に全ての乗客を安全に誘導した客室乗務員の判断と日頃の訓練には敬意を表するものでございます。

国際的な航空機の設計基準を見てみますと、脱出シューターが開いてから九十秒以内に搭乗者全員が脱出できるようにと定められておりまして、客室乗務員はこの九十秒ルールによる避難誘導の訓練を徹底して行っていたとお聞きいたしました。まさに日頃の訓練が生かされたんだと、このように思うんですね。

今、国土交通省を中心に事故当日の振り返り作業に基づく詳細な事故調査を実施しておりますけれども、厚生労働省も連携して、当日の救急医療体制がどうであったのか、大規模事故の際の想定どおり、必要な医師や看護師などの医療関係者が現場に集結をして機能する体制が取れたのか、医療機関への搬送は想定どおりにできたのか等々について、振り返り作業に積極的に参加することが私は重要だと思っているんですね。そこで、私が強調し、提案したいことは、平時の訓練のやはり重要性であると、このように思っています。
羽田空港では、実は、原則年に一回、十月に東京国際空港航空機事故消火救難総合訓練というのが実施をされております。この訓練は、国交省、消防庁、各地の医師会など九十六機関が参加をして、万一航空機事故が発生した場合に、緊密な連携の下に消火救難や救急医療活動などによって被害を最小限に抑制して、いち早く空港の再開を目指すということであります。そして、今年の十月の訓練からは、今回の事故で得られた教訓もしっかり反映をさせるべきだと、このように思っております。

昨年十月二十六日に実施された同訓練では、被害を最小限に抑制する救急医療活動といいながら、やはりそこにはドクターヘリとかドクターカーの活用というのは訓練の想定に入っていないんですね。私は、二〇二一年七月八日の厚生労働委員会で、羽田空港内で急病人や事故が発生した場合に羽田空港内にドクターヘリが離発着可能であるということは確認をさせていただいております。羽田空港から一番近い二次救命の東邦大学医療センターの大森病院、一一九番通報から病院への収容までは、空港内の本当に大変な場所からは大体五十分程度掛かるんですね。タクシー乗り場からは十五分で行けるかもしれませんが、やっぱり五十分程度掛かるということを考えると、だからこそ平常時の訓練段階からドクターヘリとドクターカーの活用も視野に総合訓練の実施を是非ともお願いしたいと考えているんですね。厚生労働大臣の見解をお伺いいたします。

○国務大臣(武見敬三君) こうした事故予防ということのためには、平時からのこの事故の対策、そして準備というのが徹底的に重要だというのは、全くそのとおりだと思います。
今般の羽田空港における航空機衝突事故におきましては、消防車両により都内の病院から医師などが現場へ出動いたしましたが、いわゆるドクターカーまでは活用されていなかったと承知しております。空港における事故発生時においていち早く医療救護体制を確保することが重要であり、その際、必要に応じてドクターヘリやドクターカーを活用することは効果的であると思います。

平時からの体制整備については、厚生労働省としてドクターヘリ、ドクターカーの運行経費等について財政支援をしておりますが、御指摘も踏まえまして、国土交通省において実施する羽田空港における航空機事故対応訓練に必要な協力をするとともに、東京都に対してドクターヘリ、ドクターカーの更なる活用の検討を働きかけていきたいと思います。

○塩田博昭君 羽田空港という巨大空港ですけれども、所管というか管轄が東京都になっているわけでございますけれども、やはり羽田空港という、もう年間にすごい人数が世界中から日本にやってくるわけですね。そういう意味では、日本という国の窓口、玄関でございまして、ここに対してはやはり東京都だけではなくて厚労省も国交省もしっかり関わって、いざという、万が一のときのための体制をしっかりつくっておく、是非お願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

そして次に、下水疫学調査、下水サーベイランスの重要性についてお伺いをしておきたいと思います。

新型コロナウイルスの感染症の法上の位置付けが昨年五月八日に五類に移行いたしまして、新型コロナの感染状況は、これまでの全数把握から全国五千の医療機関からの報告を基に公表する定点把握に変わっているわけでございますけれども、厚生労働省の発表によりますと定点把握の感染者数は移行後も増え続けておりまして、例えば昨年八月末から九月上旬には一医療機関当たり約二十人となっておりまして、そのときはやはり流行の第九波に入ったと、このように言われたんですね。その後、十一月中旬に底になったものの、同月下旬から再び増加傾向を見せまして、今年二月には流行の第十波に入ったと、このように指摘する専門家もいらっしゃいます。

直近の三月十八日から二十四日の一週間で見てみますと、一医療機関当たりの感染者数は全国平均で五・二一人なんですね。確かに減少傾向にあるものの、一定数で推移をしておりまして、コロナ感染症はまだ終わっていないと言えるということだと思っています。
そこで、下水処理場のウイルス濃度を調べることで流行の兆しや感染者数の予測など疫学情報を取得できる下水サーベイランスの活用を今こそ活用させるべきではないか、拡充させるべきではないか、このように思っています。既に自治体独自で下水サーベイランス事業を行っている神奈川県や札幌市、仙台市、養父市、小松市などの調査では、定点把握の感染者数の発表よりも早く流行の推移をつかんで市民に適切な情報の発信を行っておりまして、社会に必要なツールであるという認識が広がっているんですね。

また、札幌市では、コロナ以外にもインフルエンザウイルスを検査対象として、流行期には市から注意喚起や関連情報を発信して、市民に役立つ情報であるということで受け入れられております。さらに、小児の罹患が多い呼吸器系の感染症、ヒトメタニューモウイルスというですね、このヒトメタニューモウイルスの検出にも下水サーベイランスを活用して、この検査結果を地域の医療機関と連携することで臨床検査の効率を上げた、こういう例もあります。

このように、異なるウイルスについても下水サーベイランスという手法は役立っているんですね。新たな感染症のほとんどは海外から持ち込まれますので、例えば、国際線の旅客数が全国三位の関西国際空港では、昨年十月から、大阪公立大学が、海外からの感染症の水際対策として、航空機や空港施設から集まる下水を採取をいたしまして、細菌やウイルスを監視する研究を始めております。

EUにおいては、欧州委員会が、新興感染症を監視するために、下水サーベイランスを全ての加盟国に対して二〇二五年までに導入することを強く求めておりますし、アメリカにおいては、疾病対策センター、CDCが主導いたしまして、人口の半分をカバーする千か所以上の都市下水においてコロナウイルスの観測を実施をしております。世界保健機関、WHOも、二〇二二年の四月に下水サーベイランス調査の実施を後押しする指針を発表しております。

我が国においても、昨年十一月の時点で、全国八府県と五十九市町合わせた六十七自治体の議会において下水サーベイランス事業の実施を求める意見書も採択をされているわけでございまして、今年度は僅かに事業費盛り込んでいただきましたけれども、全く不十分であるというふうに思っております。

厚労大臣、是非、大臣の決断で下水サーベイランス事業の更なる普及と全国展開も検討していただくなど、来年度の拡充については是非とも前進させていただきたいと思いますが、厚生労働大臣の見解をお伺いいたします。

○国務大臣(武見敬三君) このパブリックヘルス、公衆衛生の観点から、この下水等を用いたサーベイランスというのは極めて有効であるというふうに考えております。
下水を用いた感染症のサーベイランスは、ポリオウイルスに関しては、二〇一三年度から感染症流行予測調査事業の中で実施をしてまいりましたが、今年度から新型コロナウイルスについても本事業の対象とし、現時点では十二県において実施する予定でございますが、引き続き、実施自治体の拡大に向けて、未実施の自治体に更に働きかけをしていきたいと思います。

また、今年度の厚生労働科学研究やAMED研究において、次のパンデミックへの備えとして、下水サーベイランスが他にどのような病原体で活用可能か研究を行うこととしておりまして、これらの研究結果を踏まえて、今後の下水サーベイランスの活用方法を更に検討していきたいと思います。

○塩田博昭君 今大臣お話しいただいたとおり、今年度しっかり実装、事業として進めていただいて、その実績を基に来年度また大きく広げていただきたいということを強くお願いを申し上げまして、質問といたします。
本日は大変にありがとうございます。