大人の発達障害に対する支援策の拡充を/厚生労働委員会
第215回の特別国会から厚生労働委員会に所属することになり、12月19日に開催された厚労委の所信質疑で質問に立ちました。
私からは、大人の発達障害への支援策の拡充とマイナ保険証の活用について、政府の見解を質しました。
特に、大人の発達障害については、社会の理解がまだまだ進んでいない現状を指摘した上で、発達障がいを持つ従業員に対する合理的配慮や働き方と適正な賃金の在り方など、きめ細やかな支援策の拡充を求めました。
<質問と答弁>
○塩田博昭君 公明党の塩田博昭でございます。
今日は大人の発達障害についてお伺いをしたいと思います。
大人になってから、職場などにおきまして自身の責任とか役割が求められるようになってから大人の発達障害と診断されるような場合が多いんですね。発達障害の特徴というのは皆さんも御存じなように多岐にわたっておりまして、注意欠陥があるとか、こだわりがあったり、人との対面のコミュニケーションが苦手であったり、忘れ物が多いと、こういう、人によって様々でございます。
本人も周りとの違いに大きなストレスを抱えている場合もありますし、周りと違うという理由で同僚や上司から激しい叱責を受けるとか過度な否定を受けてつらい経験をされるというようなこともある場合があるんですね。
これは本人の人格の問題でも努力が足りないということでもございませんで、発達障害は脳機能の特性であって、人それぞれが持つ一つの個性であるということであると認識をしておりますけれども、そこでお伺いいたします。
令和三年に障害者差別解消法が改正をされて、本年四月から事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化をされたわけでございます。今私が申し上げたことと少しずれるのかもしれませんけれども、こうした法改正が行われたことによって大人の発達障害の方に対して事業者が努力、工夫すべき合理的配慮が法的に義務化されたことの意義、改めてお聞きしたいということと、事業者に課せられた義務とはどのようなことを指すのかということ、そして本年四月以降に各企業や事業者において具体的な取組に変化は起きているのか、この点についてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(藤川眞行君) お答えいたします。
まず、事業主の雇用障害者に対する合理的配慮の提供義務の意義についてでございますけれども、これは具体的には障害者雇用促進法の方で規定しておりますけれども、当該義務に基づき労働者の募集や採用に当たり障害者の障害特性に配慮した必要な措置が講じられることでありましたり、採用後、障害特性に配慮した職務の遂行に必要な施設整備や援助を行う者の配置等の必要な措置を講じられること等によりまして、雇用の促進や職場定着の促進が図られることにその意義があるというふうに考えてございます。
それで、次に、大人の発達障害に対する合理的配慮の具体的内容についてでございますけれども、もう先生御案内のとおり、発達障害には様々な障害があるということで、それぞれの障害特性に応じた必要な配慮は異なるため一概にお答えすることは難しいんでございますけれども、一例を申し上げますと、例えば労働者の募集、採用に当たって面接官との意思疎通を助けるために面接時に発達障害に係る就労支援機関の職員等の同席を認めることや、採用後の業務におきまして業務の指示やスケジュールを明確にして業務や指示を具体的かつ簡潔に出す等の配慮をすること等が必要になってくるものと考えております。
それで、最後の点の取組の変化でございますけれども、この障害者の雇用後の合理的配慮は、障害者雇用促進法により平成二十八年に四月から義務付けられているところでございますけれども、当該義務付けは近年の障害者の雇用の着実な進展に資するものとなっているというふうに考えております。
○塩田博昭君 今御答弁ありましたけれども、結局、今大人の障害、発達障害に対して、社会の中でもしっかり取組をして、例えばお客さんが来られたときの合理的配慮、そういうことが必要であろう。そして、厚生労働省も、今までも法改正によって、事業所内における合理的配慮義務化ということをしてきたんだというふうに思いますけれども、それがなかなか実態としてやはり進んでいないところもあるというふうに認識をしておりますので、その点について、大人の発達障害の方の働き方について改めてお聞きしたいんですね。
発達障害があることが分かって働いている方の場合、安い賃金で働いていらっしゃる方のケースが非常に多いんですね。ただ、本人の個性や特性があって、仕事の内容によってはとても高いスキルの仕事をされている方も非常にいらっしゃいます。
そうした本人の個性や特性に合った、仕事内容の適性を図る支援の充実がやはり必要だと、もっと必要だと思っているんですね。また、賃金の適正化についても、しっかり取組が更に必要であろうというふうに思っていますけれども、この点についてお伺いいたします。
○政府参考人(藤川眞行君) お答えいたします。
先生御指摘のとおり、発達障害者を含む障害者がそれぞれの特性や希望に合わせてふさわしい仕事に就いて待遇の改善が図られていることは、重要なことであるというふうに考えてございます。
それで、このようなことから、まず求職者である障害者と事業主との間できめ細かなマッチングを行う必要があると考えておりまして、まずハローワークにおきましては、個々の障害者の特性や希望に合った個別の求人開拓でありますとか、精神保健福祉士等の資格を持つ精神・発達障害者の雇用サポーター等によりまして、専門的な求職、就職支援を実施してございます。
それとまた、雇用された後のその障害者が、御指摘ありました仕事の内容の適性化を含めた職場定着でございますとか待遇改善を支援することも重要であるというふうに考えてございます。
このことにつきましては、ハローワークによる職場内での障害者を支援する精神・発達障害しごとサポーターの養成でございますとか、JEED、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構でございますけれども、ジョブコーチ、これは事業主に対して職務や職務環境の改善を助言するものでございますけれども、このジョブコーチの養成、あるいは、障害者の例えば正規雇用労働者への転換等の待遇改善を支援するための事業主に対する助成金の支給等を実施してございます。
今後とも、大人の発達障害を含む障害者が、それぞれの特性や希望に合わせてその能力や適性を十分に発揮して活躍していただけるよう支援を実施するとともに、その活用に向けて周知に努めてまいりたいというふうに考えてございます。
○塩田博昭君 この問題について厚労大臣にもお聞きしたいと思います。
今も御答弁ありましたように、政府としては、精神・発達障害者しごとサポーター養成講座というのを開催をしておりますし、職場における精神発達障害の理解の促進を図り職場定着を進めたり、行政における相談機関の体制なども徐々に整備をされてきているというふうに思っています。
しかし、子供の発達障害と比べて、やはりどうしても大人の発達障害については社会全体の認識がまだまだ進んでいないというふうに思っていますし、いまだ不十分な状況だと言わざるを得ないというふうに思うんですね。
発達障害はとかく子供の問題というふうに受け止められがちなんですけれども、社会に出てからも継続した支援がやはり欠かせないというふうに思っています。特に大人になってから診断された方に対してはよりきめ細やかな充実した支援が必要であろうというふうに思いますので、大人の発達障害に対する大臣の見解をお伺いいたします。
○国務大臣(福岡資麿君) 御指摘のとおり、大人の発達障害につきましては、お一人お一人の状況に応じて様々な課題があることを承知しておりまして、それぞれの状況やニーズ等に応じた丁寧な支援を行っていくことが大変重要であると考えております。
就労する発達障害者の方の支援につきましては、様々なニーズに答えるべく、御指摘の精神・発達障害者しごとサポーターによる職場での理解促進を始めとした様々な支援策を講じているところでございます。
さらに、就労の場面に限らず、発達障害者支援センターにおける発達障害についての情報提供であったり、また、大人も含めた発達障害のある方の相談のほか、個々の事業所の方などに対して発達障害ナビポータルにおいて発達障害の特性や働くことへの支援策の情報提供を実施しているところでございます。
こうした様々な取組を通じまして、社会における大人の発達障害の方への理解や認知を高めていくとともに、発達障害者お一人お一人が社会のあらゆる場において能力を十分に発揮していただける環境づくりのために必要な支援が届くよう、周知啓発に努めてまいりたいと考えております。
○塩田博昭君 今前向きな御答弁、大臣からいただきましたけれども、現実は、やはり事業所内において、例えば発達障害があって、例えば大学等でも、非常に最高峰の大学を出られて卒業されても、仕事がうまくいっていない方ってやっぱりいらっしゃいます。
やはり、本人の特性とか個性があるので、どうしても仕事内容と本人の特性、個性が合わないとうまくいかない。だから、こういうところにやはりしっかりした支援をもっとしていかないといけないんじゃないか。そして、うまく働いてもらえないから賃金も低い、こういうことではなくて、やはりそういうところに対しても、事業所に対しても、もっとケアができるような体制を是非、これはまた今後も議論していきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
次に、マイナンバーカードの健康保険証、マイナ保険証の利用について伺いますけれども、十二月二日以降、紙やプラスチックの保険証の新規発行がされなくなりまして、政府はマイナ保険証の利用を進めておりますけれども、いまだに誤解や不安の声が多くあるんですね。
一つは、介護施設や老健施設に入所されている方へのマイナ保険証への移行が進んでいないということがあります。こうした施設では、マイナ保険証は、何て言っているかというと、施設側では預かりにくいというふうにおっしゃっているんですね。例えば、施設の職員が付き添って通院に行かないといけない、通院する場合、マイナンバーカードというのは様々な個人情報にたどり着ける要因がありますので、施設側が預かりづらいというふうにおっしゃっています。
そこで、マイナンバーカードを持っていても、そしてかつ保険証の利用を登録されている、こういう高齢者であっても、自分で利用して医療機関の受診が困難な方については保険証と同じように利用できる資格確認書を発行できないかというふうに思うんですね。
そして、発行できるのであれば、最大五年のカードの更新時期においても自動でやはり次も送られてくるような体制にしていただきたい、こういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(鹿沼均君) 御質問の点でございます。
高齢者や障害者等のマイナ保険証による受診が困難な方につきましては、マイナ保険証をお持ちであっても申請に基づき資格確認書を交付することとしております。なお、その資格確認書の交付申請につきましては、親族等の法定代理人による代理申請ですとか、施設職員などの介助者等による代理申請も可能としているというところでございます。
また、先生後半のその更新時期後の問題についてでありますが、保険者において要配慮者として取り扱われる高齢者や障害者といった方々につきましては、申請により交付された資格確認書の有効期限が切れる前に再度申請することなく保険者から資格確認書を交付することとしております。
引き続き、マイナ保険証で受診することが困難な方も含め、全ての方が保険診療を受けられるよう着実に対応を進めていきたい、このように考えております。