公明党 参議院議員/全国比例区 塩田ひろあき

活動報告

下水サーベイランスの活用で感染傾向把握を/内閣・厚労連合審査

2023年04月18日

第211回国会 参議院 内閣委員会、厚生労働委員会連合審査会 令和5年4月18日

塩田博昭君 公明党の塩田博昭でございます。
まず、国産ワクチン開発の課題と今後の展望についてお伺いをしたいと思います。
新型コロナウイルス対策の柱となるのは、やはりワクチン接種であります。国内では、一回目、二回目ワクチン接種率は八〇%を超えまして、三回目も約七〇%でありますけれども、ワクチンはいずれも海外で開発されたファイザー製やモデルナ製でございます。残念ながら、国産のワクチン開発は進んではいるものの、今のところ国内二社から薬事承認申請が出されてはいますけれども、いまだに実用化には至っておりません。


一方で、海外ではこれまで、アメリカ、またイギリス、中国、ロシア、インド、キューバなどで次々と自国で開発された国産ワクチンが実用化をされている。日本はなぜこれほどまでに開発が遅れて、今なお時間を要しているのか。
四月七日の参院本会議で、岸田総理はその要因について、産官学いずれにおいても感染症研究が先細りしていたこと、国においてもワクチンへの投資や政策立案を十分に行ってこなかったこと等があったと、このように答弁をされました。それでは、なぜ感染症研究が先細りになったのか、なぜワクチンへの投資や政策立案が十分でなかったのか、しっかり検証すべきだとやはり思います。
加えて、大学の免疫学の研究家や製薬メーカーなどからも、大規模臨床試験への実施の困難さ、先進国に比べて霊長類研究センターが不足している、研究開発の環境未整備や予算の削減なども指摘をされているわけでありますが、ワクチン開発の遅れの要因について、まずどのように分析をしているのか、具体的にお答えいただきたいと思います。

政府参考人(西辻浩君) 今般のコロナ禍で国産ワクチンの開発が遅れた要因に関してのお尋ねでございます。
御指摘の大規模臨床試験の実施の困難さにつきましては、ワクチンの場合、一般的な医薬品と異なりまして、数万人単位の健常な被験者を確保することが必要になるわけでございますが、これまで我が国ではワクチンの大規模な臨床試験の経験がなく、緊急時にもそのような臨床試験を行うという拠点の整備もされていなかったという状況がございました。
このため、ワクチン開発・生産体制強化戦略に基づき、臨床研究中核病院が持つネットワークを活用した体制の強化等を進めているところでございます。
また、研究開発環境等についてでございますが、我が国の場合、公衆衛生水準の向上等に伴い感染症研究が先細りし、その結果、最新のワクチン開発が可能な研究機関の機能それから人材が不十分となり、また、戦略的な研究費配分が不足していたという状況がございました。
このため、AMEDに、先進的研究開発戦略センター、SCARDAを設置いたしまして、世界トップレベルの研究開発拠点の形成、それから、戦略的な研究費の配分等によりワクチンの開発能力の向上に取り組んでいるところでございます。

○塩田博昭君 今答弁の中にもありましたけれども、次に、今後の国産ワクチン開発の展望についてお伺いをしたいと思います。
世界から大幅に後れを取ったこの現状を打破するために、政府はこの三月、内閣府の国立研究開発法人日本医療研究開発機構、AMEDに、ワクチン開発の司令塔となる組織、先進的研究開発センター、SCARDAを設置をいたしまして、医薬品の開発などでは異例となる二千億円程度を投じて、大学や製薬企業を支援するとしております。
これによって世界トップレベルの研究開発拠点の形成にどうつながるのか、また、SCARDAの具体的な取組を示しながら、まずはいつまでに何に優先的に取り組んで今後のワクチン開発などにつなげる予定なのか、具体的なロードマップなどがあれば教えていただきたいと思います。

○政府参考人(西辻浩君) お答え申し上げます。
世界トップレベルの研究開発拠点の形成事業につきましては、昨年八月に、フラッグシップ拠点を始めとする各拠点の採択を行い、現在は、世界トップレベルの研究開発拠点の形成に向けまして、必要な取組等を文部科学省とも連携して目指しているところでございます。
また、ワクチン・新規モダリティ研究開発事業につきましては、感染症有事にいち早く安全で有効なワクチンを国内外にお届けするため、感染症ワクチンの開発、またワクチン開発に資する新規モダリティーの研究開発を支援しており、現在、五つの感染症に対するワクチンの開発及び新規モダリティーに関する課題五件の研究を進めているところでございます。
より早く必要な国産のワクチンをお届けできるよう取り組んでまいりたいと考えております。

○塩田博昭君 次に、厚労大臣にお伺いしたいと思います。
新型コロナのワクチン接種については、令和五年度もワクチン接種が推奨されております。もしかしたら、これから毎年接種が必要になるのかもしれません。国民は、この三年間で数回の接種を経て多くの方が実感した副反応などから、より安全で長く効果の持続するワクチンを求めております。だからこそ、国産ワクチンという安心感はとても重要であると、このように思います。
さらに、今後も安定供給量を海外から購入し続けられる保証はないわけでありますので、やはり国産ワクチンの開発に向けた決意を是非厚労大臣からお伺いしたいと思います。

○国務大臣(加藤勝信君) 御指摘のように、やはり国産であるということの安心感、そして、まず必要な量をやはり確保していくと、こういった観点から、立っても、国産の新型コロナワクチンの開発して支援をしていくということ大変大事でありまして、その開発、生産に取り組んでいる複数の企業に対しては、AMEDによる研究開発に関する支援、また、厚生労働省による生産体制の整備などに対する支援もこれまで逐次行ってまいりました。
さらに、次の感染症危機を見据えていく必要もあります。国内で、新型コロナに限らず、感染症に対する国産ワクチンを開発、生産できる体制を確立していくことは極めて緊要な課題であり、その実現に向けて、令和三年六月に閣議決定されましたワクチン開発・生産体制強化戦略に基づき、先ほどから委員お話がありました、AMEDに設置されたSCARDAによる研究開発支援を進めるなど、関係省庁と連携して体制の整備、そして、我が国において新しいワクチンが開発そして生産できる、こうした状況を是非つくり上げていきたいというふうに考えています。

○塩田博昭君 次に、厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが五類に移行した後の感染者数の把握や公表について、国が毎日取りまとめて公表する全数把握をやめて、指定した医療機関に週一回報告してもらう定点把握に変更する方針が、この四月十二日の専門家部会で了承されたとのことでありますけれども、そのことについて何点かお伺いをしたいと思います。
これは、五月八日の五類移行後、直ちに全数把握による国の報告がなくなって、その日から一週間後に定点把握の数値が公表されるようになるということなのかということであります。
そして、厚生労働省の専門家組織、アドバイザリーボードは、四月の五日に、直近一週間の新型コロナウイルスの新規感染者数が全国で前週比一・〇三倍となり、二か月半ぶりに増加に転じたことを発表しました。また、東京都の新規感染者数が五月上旬から中旬にかけてピークを迎えるとの試算も示されております。
ちょうどそのタイミングで全数把握の公表をなくして、週一回の報告で各地域の流行の傾向を適切に把握できるのかということがまず一つ。また、全数把握と定点把握では、過去のデータとの単純比較ができなくなるのではないかというのが二つ目でございます。そしてさらに、週一回の定点把握への切替えがどのような科学的根拠に基づいて行うのかについて、厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

○国務大臣(加藤勝信君) 今は、感染症法等に基づいて、全ての医療機関から患者の報告が行われているわけでありますけれども、五類移行に伴いそうした報告が行われなくなる。したがって、それに基づく感染症の公表というのは、これ言わばできなくなるということでありますが、他方で、季節性インフルエンザで行っている、今委員お話がありました定数把握と同じ手法を導入するということで、毎週金曜日に、定点報告を求める医療機関から報告される前週の月曜日から日曜日までの報告患者数を都道府県ごとに公表するということになります。
したがって、今のようなやり方は五月七日分を五月八日に公表することが最後となり、その後は、今のことで申し上げれば、五月十九日に、今月八日から十四日までの患者総数を位置付け変更後最初に公表すると、こういう流れになるところであります。
定点把握により、感染者数の動向把握については、患者数の増加や自己検査の普及等により実態として全患者の把握は難しくなっている状況の中で、昨年度の厚生労働科学研究において、七自治体での検証の結果、おおむね全数報告と同様のトレンドが確認できることが確認できたわけであります。これを受けて、厚生科学審議会感染症部会における議論を経て、先ほど申し上げた仕組みに移行することとしたものであります。

その際、これまで実施していた医療機関等情報支援システム、いわゆるG―MISによる新規入院者数の把握、ゲノムサーベイランス、血清疫学調査及び下水サーベイランスの研究も継続的に実施するなど、位置付け変更後においても、今申し上げた様々な手段を講じて重層的な形で流行状況の把握を行う、そうした体制を確保することとしております。
そうしたことを通じて、感染状況をしっかり踏まえながら、それに応じた対応を図っていきたいと考えております。

○塩田博昭君 ありがとうございます。
是非、週一回の定点把握への変更になっても重層的に対応していただくということが重要であると思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
そして、今大臣からも話がありましたけれども、最後に、この下水サーベイランスについて改めてお聞きをしたいと思います。
感染症対応の基本は、適切な検査を正確に行って感染の動向を把握することがやはり重要であると、このように思います。PCR検査などでは、感染者が検査を受けなければ陽性者を特定できないわけでありますけれども、下水サーベイランスを活用すれば、その地域の見えない感染を見える化することができる、このように思います。
感染の初期段階から医療機関の検査報告よりも早く感染の傾向が分かりますし、その後の感染の規模や増減の傾向も把握できる技術が下水サーベイランスであると、このように思います。

感染者数の把握が定点把握に変更された後、万が一、急激に感染が増加するようなことがあったとしても、下水からはその地域の感染状況が日々反映されて傾向をつかむことができますので、是非、厚労省においても、新設される内閣感染症危機管理統括庁と連携を図りながら、下水サーベイランスを早急に全国で実施できるよう検討を早めてもらいたいと、このように思います。
厚労大臣の見解をお伺いいたします。

○国務大臣(加藤勝信君) 下水サーベイランスについては関係省庁連携して取り組むこととしておりますが、厚労省では、下水サーベイランスに関する推進計画に基づき、今年度の調査研究として、国立感染症研究所などにおいて下水ウイルス濃度と地域の感染状況の相関関係の分析を引き続き行うとともに、新たに、コロナウイルスに限らず、下水中の複数の種類のウイルスの同時検査手法の検討も行うこととしております。

さらに、内閣官房が二十六自治体の協力を得て実施した昨年度の実証事業の結果、これは間もなく取りまとめられるということでありますので、これも踏まえて、新型コロナの監視体制の強化を図るためにどのように下水サーベイランスを活用していくのか、またそういったことができるのか、関係省庁とも連携して検討を進めていきたいと考えております。

○塩田博昭君 ありがとうございます。
是非、下水サーベイランスについては、例えばEUなんかでも、二〇二五年から、主要都市においてはもう下水サーベイランスをしっかり行うというようなことも方針で決めているわけでございますし、アメリカでもそういう実施をしている。そういうことを考えれば、いざというときのためにも下水サーベイランスは必要であると、このように思いますので、是非早急に下水サーベイランスについても検討を進めていただきたいということを望みまして、質問といたします。
以上で終わります。ありがとうございました。