本会議で党を代表して「経済安全保障推進法案」の質問
4月13日、参議院本会議で公明党を代表して、岸田内閣の重要法案である「経済安全保障推進法案」の質問に立ちました。
この法案は、国際情勢が厳しさを増す中、経済と安全保障を切り離して考えることはもはや不可能であり、経済面でも安全保障を確保することを目指す法案です。
正式な法案名は「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」といって、①重要物資のサプライチェーンの強靭化②基幹インフラの安全性、信頼性の確保③官民技術協力の推進④特許出願の非公開化という4つの柱で構成されています。
■以下に質問の全文を掲載します。
ただいま議題となりました経済安全保障推進法案について、公明党を代表し、質問致します。
米中の覇権競争の激化やロシアによるウクライナ侵攻などが起きる中で、経済政策を安全保障の観点から捉え直す必要性が高まっており、経済安全保障法制の重要性はますます大きくなっています。
具体的には、技術流出の防止が一層重要な課題となっているほか、国民の安全・安心に対する新たなリスクであるサイバー攻撃の影響や重要物資等の国際的な供給途絶に対する脆弱性について、国を挙げて、官民が協力して対処していくことが肝要であると考えます。
1.総則、罰則について
経済安全保障政策を考える場合に最も大切なことは、事業者の経済活動への過度な介入を回避することと、規制の実効性を確保することをいかに両立するか、どこでその両者のバランスをとるのかが肝になるのではないかと考えます。
規制の実効性という点だけを考えれば、罰則を強化すればよいということになるかと思いますが、それでは事業者の経済活動が委縮してしまうのではないかと思われます。
本法律案の第5条では、「この法律の規定による規制措置は、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない」と規定されており、前述の考えを具現化した規定であると認識しております。
まずは、経済安全保障政策を実施する上で、第5条に規定されている「事業者の経済活動への過度な介入を回避することと規制の実効性を確保すること」をいかに両立させるかについて、岸田総理に伺います。
2.重要物資のサプライチェーンの強靭化
次に、本法律案の四つの柱、まずは重要物資のサプライチェーンの強靭化について伺います。
本法案では、国民の生存に「必要不可欠」または「広く国民生活もしくは経済活動が依存している」物資の重要性や、海外への依存度などを踏まえて、政令で特定重要物資が指定されるとされております。
具体的な物資について、小林経済安全保障担当大臣は、骨太の方針2021で挙げられた半導体、電池、レアアースを含む重要鉱物、医薬品といった物資は該当し得ると衆議院内閣委員会で答弁しています。
ロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアからの輸入に大きく依存していたパラジウムが我が国で入手困難となりました。パラジウムは、自動車などの排ガス浄化触媒のほか、歯科用合金や半導体用めっきにも使われており、関係する業界からは苦境を訴える声が上がっています。
一つの具体的な事例として、パラジウムを特定重要物資として指定するかどうかの検討を行う際には、どのような点を見るのでしょうか。例えば、何か客観的な数値基準を用いて判断することになるのでしょうか。小林担当大臣に伺います。
また、民間事業者による供給確保計画の策定と支援措置について伺います。本法案では、認定供給確保事業者の取り組みへの助成や、利子補給のほか、金融支援が措置されておりますが、あわせて、税制での後押しを検討する必要はないでしょうか。岸田総理に伺います。
次に、重要物資の供給網に関する調査報告について、努力義務として、罰則を設けていないことの妥当性についても伺います。この点について、衆議院内閣委員会に参考人として出席した東京大学東洋文化研究所の佐橋亮准教授は、「罰則をもって営業秘密を含む可能性があるような情報を企業に要求するということは、好ましくないと考えています。そういった非常に機微なもの、これはやはり強制的に出させることに意味があるとは思えません」といった旨を明確に述べておられます。
つまり、佐橋准教授のご意見も、安易に罰則に頼るのではなく、政府と事業者が密にコミュニケーションを取って、事業者が協力してくれるような体制をつくることが重要であるということ、だと思います。加えて言えば、政府自身が、貿易統計の細分化や充実を図るといった政府自ら努力を行うことも必要ではないかと考えます。
重要物資の供給網に関する調査報告について、努力義務として、罰則を設けていないことの妥当性、また、業者が協力してくれる体制づくり、さらには貿易統計の細分化等による政府自身の取り組みの必要性について、岸田総理に伺います。
3.基幹インフラの安全性、信頼性の確保
次に、基幹インフラの安全性、信頼性の確保について伺います。
特定社会基盤事業者に指定されるのは、基本的には東京電力や関西電力等の大企業であって、中小企業や小規模事業者が指定されることはないのでしょうか。例外的に、中小企業や小規模事業者が指定され得るとすれば、どういうケースなのでしょうか。中小企業や小規模事業者の懸念を払拭する意味でも、小林担当大臣の明快なご説明をお願いします。
さらに、特定重要設備の審査期間について伺います。審査期間は、届出受理から原則30日、審査や勧告・命令に必要な期間は最長4カ月まで延長できることになっていますが、事業者にとって、設備導入まで足踏みさせられる期間は機会損失となり、短かければ短いほどよいと思います。
この期間をなるべく短くするためには、審査体制を充実させるとともに高効率の審査が実施されることが必要だと思いますが、この点に対する考えについて、岸田総理に伺います。
4.官民技術協力の推進
次に、官民技術協力の推進について伺います。
本法案では、シンクタンクへの委託や官民協議会による伴走支援などが盛り込まれていますが、これらが中途半端なものになってしまうと、基金も無駄金となり、本法案で考えていることは、「絵に描いた餅」になるリスクも高いと思われます。
そうしたリスクを回避するための最大の課題は人材の確保、育成であると考えます。先端技術だけではなく、安全保障や社会実装に軸足を置いた優秀な研究者やプロジェクトマネージャーをいかに確保し、育てていけるのかが鍵を握ると思われますが、この点についてどのような方策を考えているのでしょうか。
また、一部の研究者などから、特定重要技術に指定されると、その分野の研究開発や論文の発表などがやりにくくなるのではないかという懸念の声も聞かれますが、そうしたことがないのかについても、岸田総理に伺います。
5.特許出願の非公開化
最後に、特許出願の非公開化について伺います。
特許出願の非公開の制度を構築することによって、特許の内容が公開されないと、他国にとっては、当該特許にかかる発明は、発明されていない状況になることから、他国で同一内容の特許が成立してしまう可能性も出てくると思います。
そのため、安全保障上の観点だけではなく、経済活動やイノベーションにどのような影響を及ぼすかも考慮して、非公開とする対象を十分に絞り込む必要があると考えますが、具体的にどのような絞り込みを行うのか、また二次審査を行うのは特許庁ではなく内閣府だと承知しておりますが、どのような体制でスタートするのでしょうか。防衛省や外部の専門家の協力も得ながらということになるかと思いますが、その人員規模や構成について、小林担当大臣に伺います。
政府は、産業界と十分に対話を重ねるとともに、経済安全保障の意義について、丁寧に説明することに努めることで、国民の理解を醸成しつつ、経済安全保障の確保と産業競争力の向上を両立させることが重要であると考えます。本法律案がその重要な第一歩となることを期待し、質問を終わります。