液状化対策で具体的に制度の仕組みを確認/応急修理制度の活用後の公費解体も可能に/国交委
4月2日、国土交通委員会で質問に立ち、能登半島地震で深刻な液状化被害に見舞われた地域の復旧に向けて「宅地液状化防止事業」の対象地域や地方自治体の負担への支援、個人負担の確認など、具体的な制度や救済の仕組みが、実際に被災者に当てはまるのか、政府の見解を質しました。
特に、液状化対策の場合、住めるようになるまでに数年単位の時間がかかるため、液状化した宅地や町内で、一時的な応急措置として「住宅の応急修理制度」を活用した場合、その後「公費解体」ができなくなるのではという懸念について、環境省に質問したところ、一時的に住んだ後であっても、さらに液状化が進んだ場合などに「公費解体」が認められるとの答弁がありました。
<質問と答弁>
○塩田博昭君 公明党の塩田博昭でございます。
今日は、前回に引き続きといいますか、能登半島地震で幅広い地域において起きている液状化被害についてお伺いをしたいというふうに思います。
この問題は、さきの国土交通委員会でも取り上げさせていただいたり、予算委員会でも取り上げさせていただきました。そして、特にこの三月二十二日に政府の能登半島地震復旧・復興支援本部で示された新たな液状化対策について今日は具体的に確認をさせていただきたいと、このように思っております。
まず、能登半島地震による液状化被害が著しい石川県とか富山そして新潟、三県において、国土交通省は、液状化の再発防止に向けた対策検討調査、これを行っておりますけれども、既に把握をされているだけでも一万五千件に及ぶ液状化被害が起きておりまして、今も住宅が傾いていたり、基礎から持ち上がった自宅の修理がなかなか手付かずの状態のまま残っている、こういう状態でございます。だからこそ、私たちは、一刻も早くこの新たな対策が必要であるということで強く求めてきたところでございまして、今回の対策については期待をするところでございます。
液状化の被害を受けた道路、公園とか水道といった公共施設と、それらに隣接する住宅地などで自治体が一体的に面的な液状化対策を行う宅地液状化防止事業では、国の補助率、従来の四分の一から二分の一に引き上げて、被災者が自治体の支援を受けて地盤や基礎の復旧などを行う場合に効果促進事業として国や地方自治体で費用の三分の二を支援をするという、こういうことになっているわけですが、残り三分の一は各住家の世帯主、個人が負担をするということですよね。
一方で、地方自治体の負担は宅地液状化防止事業で二分の一、そして効果促進事業で三分の一となりますけれども、自治体の財政負担というのはかなりの額になるんではないか、こう思われます。この地方自治体の負担について、交付税措置などについてどうなっているのか、まず一点目、教えていただきたい。
そして、効果促進事業で住宅の世帯主が地盤や基礎の復旧工事をした場合に世帯主が負担する三分の一の費用感というのがどの程度になるのか、住家の傾きを直す一般的な工事の例示を示していただいて概算を教えていただきたいと、このように思っています。
そしてさらに、この効果促進事業は、罹災証明書の半壊以上が対象なのか、一部損壊は対象にならないのか、判定度合いによってどのような支援の違いがあるのかについてお答えいただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。
幾つか質問をいただいておりますので、順次お答えいたします。
まず、宅地液状化防止事業ですが、液状化被害を受けた地方公共団体が道路等の公共施設とその隣接住宅地を含めエリア一体的に地下水位の低下などの液状化の再発防止に取り組むための事業となってございます。
今お話ございましたとおり、被災者の方々がこの再発防止のための工事の前に支障となる宅地の地盤や住宅の基礎の復旧などを行う場合につきましては、効果促進事業によりまして国と地方公共団体で新たに最大三分の二の補助率で支援するということで、残り三分の一は個人の負担ということになります。
それから、地方財政措置の話もいただきました。地方財政措置につきましては、今回の支援策の強化に合わせ、地方財政措置もかなり拡充をされております。具体的に申しますと、宅地液状化防止事業につきましては、地方債と普通交付税により措置することで地方公共団体の実質負担額を事業費の二・五%に、それから、効果促進事業につきましては、特別交付税措置によりまして地方公共団体の実質負担額を事業費の六・七%にそれぞれ軽減をしております。
それから、方法でございますが、液状化防止事業の支障となる住家の傾きを直すための工事の例と費用ということでございますけれども、例えばジャッキアップということで、下にジャッキを入れまして上げるということでございますけれども、ジャッキアップ工法の活用が想定されます。その費用でございますが、住家の構造でありますとか被害の程度などによってかなり大きく変わるものでありますので、大変申し訳ございませんが、一概に申し上げることはできません。申し訳ございません。
なお、今回の支援措置の強化におきましては、罹災証明における判定結果によらず、液状化により被災した地盤や住宅の基礎などが宅地液状化防止事業を行う際に支障となる場合に、その復旧等を効果促進事業により支援することとしているところでございます。
以上でございます。
○塩田博昭君 御答弁ありがとうございます。
なかなか具体例については、確かにどれぐらいの費用が掛かるのかというところまでは難しいかもしれませんけれども、できる限り、住民にとっては、被災者にとっては非常にそこいらに対する関心が高いですし、どれぐらいの費用が掛かるんだろうか、そして、三分の一で自己負担ということになったとしても、そこに対してやはりどれぐらいものが必要なのかということは、やっぱり今後のことについてめどを立てておきたいということもあると思いますので、できるだけそういう例示も今後していただきたいなと思っていますので、よろしくお願いいたします。
そして、液状化により被害を受けた建物、宅地の復旧と、その後の安全性を確保するために、面的な液状化対策と建物の耐震化を一体的に行うと、こういうことが重要だと思いますけれども、宅地液状化防止事業と効果促進事業の対象エリアについて、冒頭で聞いた国の対策検討調査に基づいて国が、国交省が決めるのか、それとも地方自治体が指定するのか、教えていただきたいと思います。
そして、宅地や道路の形状、河川の影響、地盤の成り立ちなどによって、今回の液状化によって被害を受けた地域において液状化の原因や被害状況というのは多種多様でございます。そのため、できるだけ広いエリアを対象の区域として対策を講じることがとても大事であると、こう思っておりますので、できる限り対象区域広げた対策をお願いをしたいと、このように思っています。
その上で、宅地液状化防止事業は既存の事業でございますけれども、熊本地震など過去の震災においてどの程度の事業期間を要しているのか。数年から十年掛かる場合もあると、このように聞いております。そして、その間、そのエリアの住人の方々はそこに住み続けることが可能なのか。これは国交省にお伺いしたいと思います。
その上で、環境省に伺いますけれども、可能なのであれば、住み続けるために一時的な応急措置として住宅の応急修理制度を活用できないかという声は、私も一昨日も現場に行きましたけれども、こういう声聞きました。そういう中で、ところが、この制度を使うと公費解体ができなくなるという話が一方であるように聞いております。液状化対策の場合、住めるようになるまでに数年単位の時間が掛かるために、応急修理制度を使って、例えば一時的に住んだ後であっても、更に液状化が進んだ場合などに公費解体が認められないのかと、これについて政府参考人にお伺いしたいと思います。
○政府参考人(天河宏文君) お答えいたします。
宅地液状化防止事業を実施する範囲でございますが、地方公共団体において決定することとなります。また、効果促進事業による支援の対象となる範囲につきましても、宅地液状化防止事業の事業エリアと同じということでございます。
それから、できる限り広くというお話ございましたが、直轄調査によって得られた知見を活用することなどによりまして自治体に対する技術的支援をしっかりと行うことによって、できるだけ広い範囲で事業化されるようにということで進めてまいりたいと思っております。
それから、事業期間でございますが、例えば熊本地震により被災した熊本市近見地区、この場合につきましては、地下水位を低下させる工法による対策に熊本市が令和元年から工事着手いたしまして、現在も対策工事を継続しているという状況でございます。また、熊本市秋田地区というところもございますが、そこは令和二年一月に工事着手して令和三年三月に工事を完了しているということ、二年ちょっとで完了しているということでございます。
それから、住まい続けることが可能かというお話でございますが、両地区とも地域の方々が自宅にお住まいの中で工事を実施しているということで、可能であるということで承知をしております。
以上でございます。
○政府参考人(角倉一郎君) お答え申し上げます。
今般の能登半島地震が特定非常災害に指定されたことを踏まえまして、半壊以上の被害認定を受けた家屋等につきましては、所有者の解体申請に基づき市町村が行う公費による解体に対して財政支援を行っているところでございます。
被災した家屋が半壊以上ではなく準半壊と被害認定を受けた場合、公費解体の対象とはなりませんが、この場合に、応急修理制度を活用し、補修、修理を行ったものの、その後、液状化が進行するなどにより被害が拡大し、改めて半壊以上の被害認定を受けた場合、この場合につきましては公費による解体の支援対象となります。
また、半壊以上との被害認定を受けた家屋につきまして、応急修理制度を活用した場合は、原則として公費解体の支援対象とはなりませんけれども、その後の液状化の進行などにより居住が困難となり、改めて被害認定を受けた結果、解体撤去が必要となった場合、こうした事情変更を踏まえた市町村の判断により公費による解体の支援対象となり得ると、このように考えております。
環境省といたしましては、こうした制度内容、趣旨につきまして、人的、技術的支援を通じ、被災市町村に継続的に周知を行うなど、県や市町村と連携しながら、被災者に寄り添った形で支援を行ってまいりたいと考えております。
○塩田博昭君 御答弁ありがとうございます。
今のはすごく大事なことでして、液状化対策というのは非常に特異な例だと思っていまして、例えば液状化で面的な液状化対策をやるというところにおいて住み続けられるという答弁をさっきもいただいたわけですけれども、じゃ、住み続けたいということで、一部この住宅の応急修理制度を使って、まず、じゃ、少なくても住めるところをつくろうということでやった、だけど、これやっちゃうと公費解体できなくなっちゃうということが大きな難しさを生んでいたんですけれども、液状化の場合は、一昨日見てきたところにおいても家がまたこの三か月の間に数センチ動いているとか、どんどん変化している場合があるんですよね。そうすると、今の現状では一部損壊とか準半壊なんだけど、いつの間にか、やっぱりもう一回判定をしていただくと、これ半壊以上になっていると、こういう場合もあります。
そうした場合にはしっかり公費解体の対象としてやっていただく、こういうことが必要だと思いますので、こういう現状に即した、最初からもう駄目ということではなく、公費解体についても応急修理制度を使ってもやれるような、こういうことをしっかり自治体の方にもできるんだということも含めてお伝えいただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
そして次に、住宅、液状化の地域で個人が住宅を復旧する場合に、宅地の傾斜の修復や耐震改修工事に必要な費用に対して新たに最大百二十万円の交付を行う住宅・建築物安全ストック形成事業についてお伺いいたします。
ただ、この事業は既存のもので、液状化地域に限らず、住宅、建築物の耐震化を促進する事業だと理解しておりますけれども、この事業では昭和五十六年六月以前の耐震基準を満たしていないような古い住宅だけが対象になるのではないかというふうに被災者から心配の声もあるんですね。
そこで、新耐震基準を満たしている比較的新しい住宅にあっても今回の地震で被害を受けた場合、支援の対象になるのか、そして、液状化していない区域であっても今回の地震の影響によって住宅の傾斜や損壊が起きた場合の修復について、罹災証明の半壊以上の判定がなくても支援の対象になるのか、国交大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) この度、被災者が住宅の耐震改修工事とそれに必要な修復を行う場合に最大百二十万円の定額補助を行えるよう措置いたしました。
これについて国の支援制度では、新築時に新耐震基準を満たしていた住宅、すなわち今塩田委員御指摘の比較的新しい住宅ということでございますが、こういう住宅や液状化していない区域にある住宅につきましても、罹災証明書の判定にかかわらず、耐震診断の結果、住宅の傾斜や損壊により倒壊の危険性があると判断されたものであれば支援の対象となります。
○塩田博昭君 大臣、ありがとうございます。
今大臣から、液状化被害の地域であっても、それ以外の地域の住宅であっても、耐震基準を満たした住宅であっても、今回の地震による被害によって倒壊の危険があるという場合は対象になり得ると、このようにお答えをいただきました。
それでは、この事業の対象になるかどうかの判断は誰がどのように行うのかということであります。その上で、液状化事業の地域にある住宅の場合、液状化防止事業の効果促進事業とこの最大百二十万円の交付が受けられる安全ストック形成事業は併用して利用できるのかについてお伺いしたいと思うんですね。
しかし、そもそもこれらの制度は半壊以上の判定がなくても支援の対象になるとの答弁でありますが、その条件として倒壊の危険性があると、このようになっているわけであります。
倒壊の危険性があるという条件の下で、準半壊であるとか一部損壊の場合に、どのような場合が対象になるのか、正しい認識、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(石坂聡君) 住宅・建築物安全ストック形成事業において、地震時に倒壊の危険性があるかどうかについては、建築士等、地方公共団体が認める者が耐震診断を行った結果を基に、地方公共団体が倒壊性の危険、倒壊の危険性があるかどうかを判断いたします。
また、宅地液状化防止事業の効果促進事業と住宅・建築物安全ストック形成事業を併用することは可能です。ただし、宅地液状化防止事業の事業決定前に住宅・建築物安全ストック形成事業の支援を受けていた場合、これは両事業の国費が重複する場合がございます。こうした場合には、後から行います宅地液状化防止事業の交付額から重複分を控除して交付することになります。
さらに、罹災証明の判定についてでございます。
罹災証明の判定は、構造部分に限らず、住宅全体の被害状況を調査した結果によります。したがって、準半壊や一部損壊の判定であったとしても、耐震診断の結果、耐震診断は構造部分を主に見ますけれども、構造部分に損壊等があり、地震時に倒壊の危険性があると判断された住宅であれば、住宅・建築物安全ストック形成事業の支援の対象となり得ます。
○塩田博昭君 ありがとうございます。
なかなか、今の話、難しいところもあるんですけれども、構造物に損壊の可能性があるような場合は対象になるということですので、なるべくこういうものも事前の説明をしたりするときに丁寧に説明いただきたいと思います。
そして、重ねて伺いますけれども、液状化した宅地において、エリア内の面的な液状化防止対策などで傾斜が復旧された後に、修復された後に住宅を建て替える場合、また世帯主が住宅を除却しないといけないと判断した場合もこの安全ストック形成事業が交付対象になるのか、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(石坂聡君) 液状化した宅地におきまして、先に地盤等の復旧、地盤の復旧等を行った後の住宅について、これにつきましても、建築士等による耐震診断の結果、地震時に倒壊の危険性があると判断されたものであれば、その建て替えや除却も住宅・建築物安全ストック形成事業の補助対象となり得ます。
○塩田博昭君 ありがとうございます。
ただ、今の話は結構レアケースの場合とかだというふうにも思っているんですね。
そうすると、基本的には、まず百二十万円の安全ストック形成事業をやった上で、そして、面的な指定がちゃんとなされるというふうになれば、それについての三分の一の事業も使えると、このようなことが多分順番としてはいいんだろうなと、こういうふうに思っていますので、よろしくお願いいたします。
そして、最後に大臣に伺いますけれども、大臣はこれまで被災地を二度視察されておりまして、深刻な液状化に見舞われた被災地については、二月二十三日、石川県の内灘町にお伺いをして液状化被害の状況を視察いただいたと、このように思います。
私も、一昨日、内灘町に、もう三度目、行ってまいりましたけれども、また、液状化のある石川県の羽咋であるとか、富山県も様々、各市町行かせていただいて、行くたびに切実な声を聞いてまいりました。
そういう中で、傾いた住宅の修復方法や支援制度がなかなか周知されておらず、被災者は将来に不安を抱えているんですね。道路がやはり波打っていたりゆがんだままの町の中で、私も話を聞いていると、もうここには住めないから出ていくと言っていらっしゃる方もいたり、また、若者夫婦が出ていったと、このような声があったり、本当に話を聞けば聞くほど深刻な話がございます。だからこそ、今回の新たな液状化対策はとても重要であって、住民の方々や自治体の担当者に対してより丁寧な周知徹底をお願いをしたいと、このように思います。
液状化対策は本当に数年から十年掛かるものもあるということで、冒頭で確認させていただいたように、被災住宅の戸数や被害状況がより明確に判明すると、今回の新たな対策だけでは十分に対応できないものもあるんじゃないかという、私は話を聞けば聞くほどそういうふうに感じるんです。
そこで、県への復興基金のやはりこれ早期創設ということも当然必要であろうと思いますし、更なる支援の強化ということについても国がしっかり考えていただいて、誰一人被災者を取り残すことがないような、できることは全てやるという考えで取り組んでいただきたいと思います。大臣の見解と決意、伺います。
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 能登半島地震における宅地液状化被害に対する支援措置につきましては、三月二十二日に開催された復旧・復興支援本部において、その強化についてお示ししたところでございます。今後は、この支援措置につきまして、被災した地方公共団体や住民の方々に対してしっかりと周知を図り、活用を促すことが重要と考えております。
国土交通省としましては、引き続き、地方公共団体向けの説明会や個別相談など、あらゆる機会を通じて情報提供と活用促進を図ってまいります。また、液状化の被害が大きかった地域につきましては、国土交通省職員を地区担当として配置し、継続的、重点的に支援を行ってまいります。
国土交通省としましては、今回の支援策を十分活用することにより、被災地における宅地、住宅の安全の確保が推進されるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○塩田博昭君 ありがとうございます。
もう大臣からはできる限りの御答弁いただいたというふうに思っておりますけれども、できる限り、県の事業ですから、県の復興基金も含めて国としても後押しをお願いしたいと思っていますし、今後の支援の強化ということを考えると、今の既存の制度だけでは十分にやっぱりできないものもやっぱりあるなと感じますので、国としての新しい財政支援の在り方も含めて、是非御検討いただきたいということをお願い申し上げまして、質問といたします。